研究室概要

研究室のねらい

より人間の内面に近づくことが求められている次世代のエレクトロニクス

 20世紀における半導体エレクトロニクスの飛躍的発展は我々の生活を一変させ、人類社会の発展に大きく貢献しました。特に、シリコンデバイスの微細化によって、機械の演算速度と記憶容量は大幅に改善され、現在の高度情報化社会の基盤を作り上げました。21世紀になって、エレクトロニクスは、単に演算速度や記憶容量を向上するだけでなく、地球環境との調和やそこで暮らす人類の親和性を実現することが求められています。

新たな応用分野の発展への期待
新たな応用分野の発展への期待

 その背景の中で、従来の無機半導体と相補的な有機材料の軽量性・柔らかさ・低コスト性を活かした新たな応用分野への期待が高まっています。有機半導体の分野では、電子写真用感光体への応用に加え、有機EL素子への応用も進展を見せています。しかし、有機半導体の応用可能性は巨大であり、これらの進展も、その片鱗が示されたに過ぎません。事実、有機半導体を伝導層とする電界効果トランジスタの登場と高性能化に伴い、有機材料の軽量性・曲げやすさ・低価格性を活かした新たな応用分野の発展への期待が急速に高まっています。

今後の暮らしを大きく変える「薄くて、曲がる」エレクトロニクス

 次世代のエレクトロニクスは、より人間の内面に近づくことが求められています。広い面積にわたって環境情報を計測する技術はそこで必要な技術の一つであり、大面積性に優れる有機デバイスが重要な役割を果たすと期待されています。シリコンは高集積化という点で極めて優れた特性を有しますが、「単位面積あたりのコスト」が高く、大面積のエレクトロニクスを実現する際の障害となっていました。研究室では、有機半導体を相補的に用いることによって、この問題を解決する道筋を明確に示してきました。研究室で開発された「薄くて、曲がる」エレクトロニクスは今後の暮らしを大きく変えるものとして、産業界からも注目を集めています。ロボットの他にも、自動車やホームエレクトロニクスなど多方面に応用されていくと期待され、既に複数の企業と実用化に向けた共同研究が始まっています。

今後の暮らしを大きく変える「薄くて、曲がる」エレクトロニクス
エレクトロニクスの医療・ヘルスケア分野への応用
エレクトロニクスの医療・ヘルスケア分野への応用

 最近では、柔らかく、生体適合性の材料で電子・光デバイスを作製することによって、人と親和性の高いエレクトロニクスの実現を目指しています。これによって、エレクトロニクスの医療・ヘルスケア分野への応用を積極的に進めています。特に、医療分野においては、細胞間のネットワークを可視化できるインプランタブル(生体内への埋め込みが可能な)なバイオ有機デバイスともいうべき新しいデバイスを開発しています。また、ヘルスケア分野において、皮膚に絆創膏のように直接貼り付けても装着感やストレスなく健康状態を24時間モニターし続けることができるセンサへの応用を進めるなど、人間と機械を調和する新しいエレクトロニクスの実現に取り組んでいます。